キス病の症状は喉の痛みと倦怠感。伝染性単核球症(EBウイルス感染)
別名はキス病。激しい喉の痛みと倦怠感の症状がみられる伝染性単核球症とは。
20年も昔のことです。
EBウイルスに感染し、伝染性単核球症を発症しました。別名キス病(kissing disease)。
症状は、声も出ないほどの喉の痛み、喉の腫れ、ひどい倦怠感、発熱でした。急性肝炎にもなりました。今でも辛かった感覚を思い起こせるほど、体験したことのない喉の痛みと倦怠感の症状です。
コロナでも喉の痛み、倦怠感はみられますが、どういった違いがあるのでしょうか。伝染性単核球症について詳しく説明します。
声も出せないほどの喉の痛みと倦怠感で受診
尿検査や血液検査をひと通り終えると、肝臓の数値のγ-GTPが300以上あったのです。γ-GTPの一般的な基準値は、男性が50以下、女性30以下とあるため、いかに異常値であったかがわかります。そこでCT検査を受けました。
すると、肝臓と脾臓がパンパンに腫れ上がった姿が写っていたのです。本来、脾臓が治まっている場所よりはみ出していました。ひどい倦怠感は急性肝炎の症状でした。
ついた診断は「EBウイルス感染による伝染性単核球症」。医師に「発展途上国でなる病気。接吻病とも呼ばれている。アフリカの人とキスしましたか?」と聞かれました。
私もその頃は若かったので赤面です。「発展途上国?海外に行ってもいないし、外国人と接触もしていないのになんで?」と頭の中が?だらけになりました。
伝染性単核球症は別名、キス病(Kissing disease)とも呼ばれているそうです。キス病と呼ばれる所以は唾液を介してうつる病気だからだとか。
改めて、EBウイルスによる伝染性単核球症とはどういった病気かを調べてみました。
EBウイルスによる伝染性単核球症とは
EBウイルスは、日本では20代の人の90%以上が感染経験のあるウイルスです。2~3歳までに70%の子どもが感染を経験します。
小さな子どもが感染しても無症状、もしくは軽い風症状程度で大事には至りません。しかし、思春期以降にはじめて感染した人の中には伝染性単核球症を発症して、発熱、喉の痛み、倦怠感、リンパの腫れ、頭痛、湿疹、まぶたの腫れ、肝炎、脾臓の腫れなどがみられます。
通常の風邪よりも症状は長引き、脳炎や髄膜炎、急性片麻痺、末梢神経炎などの中枢神経症状や溶血性貧血、再生不良性貧血、肺炎などを合併することもあります。
自然治癒する病気のため、症状を軽減する治療が行われます。
EBウイルス感染による伝染性単核球症の治療とその後
ひどい喉の痛みと喉の腫れで食事がとれていない状態だったので病院では点滴を受けました。EBウイルスはその名の通りウイルスのため、治療薬はありません。肝臓の腫れを軽減する漢方薬を処方され、2週間の自宅安静を言い渡されました。
喉の痛みと倦怠感から解放されたときは、嘘みたいに体が軽く感じられました。1か月近くは休職していたと記憶しています。
なぜ、EBウイルス感染に至ったのか
当時を振り返ると、仕事が忙しく、免疫が低下していたのもあったのではないかと考えます。いろいろなストレスに押しつぶされそうになりながら、毎日夜遅くまで仕事をしていました。帰りの電車で降りる駅を寝過ごし、行きの電車では同僚に会社のある駅で叩き起こされ、と今では考えられないくらいハードな生活を送っていた時期でした。
大人になってからかかると私のように重い症状で苦しむケースがあるので注意が必要です。今はコロナもあり、唾液がうつるようなスプーンやストローを一緒に使うなどのシチュエーション自体が少ないと思いますが、感染予防が大切な病気です。
慢性活動性EBウイルス感染症とは
EBウイルス感染について調べていると、少し厄介なケースもあるようです。
EBウイルスに感染して伝染性単核球症を発症しても、通常は私のように数週間で症状は治まります。しかし、まれにEBウイルス感染による炎症が何年も継続し、がんや難病などを発症して命にかかわる慢性活動性EBウイルス感染症に移行することがあると知りました。日本では1年間に数十人の発症といいます。
移行する原因として、いくつかの遺伝子を失ったEBウイルスが慢性活動性EBウイルス感染症を引き起こすことがわかっています。
参照:日本医療研究開発機構 慢性活動性EBウイルス感染症の原因と、身近なウイルスががんを引き起こす仕組みを解明
EBウイルス感染による伝染性単核球症を経験して
20年たった今でも忘れられないくらいとにかく辛かったという感覚を覚えています。
若い方でも疲れているとき、頑張りすぎているとき、生活のリズムや食生活が乱れているときは免疫が低下し、普段は何ともないウイルスでも感染症を発症して重症化する危険性があります。若いからといって無茶をせず、自分の体をいたわってください。